屋外広告士試験合格に向けて⑤ ガイドライン過去問解説

前回は、屋外広告物法(5問中)からの出題1問(法規15問中の最初の問題)を解説しましたが、今回はそれに続く屋外広告物条例ガイドライン(4問中)からの出題1問を解説します。

屋外広告物法というのは法律ですから、国会の出席衆議院議員の2/3の賛成で可決される非常に権威のあるものです。一度決めたら、そう簡単に変更はできません。ちなみに、昭和24年に制定されています。一方ガイドラインは、国土交通省が各地方自治体の条例と屋外広告物法の間に入り、円滑に運用できるように道筋をつけているものですので、ときどき修正されます。地方自治体(特に政令指定都市や中核市)は屋外広告物条例を独自に設定するケースが多く、地域により大きく異なります。近年注目されている屋外広告物の点検でも、点検する必要のある屋外広告物の範囲や点検者の資格などが行政により多岐にわたっていますが、ガイドラインが主導して調整しているのです。北海道のカニの看板落下事故を受けて、平成28年に屋外広告物の所有者に管理義務があると新たに制定したのが大きな事例ですね。

令和3年度6問目です(一部抜粋)。適切でないものを選んでください。

①ガイドライン第3条に規定される禁止地域内であっても、公職選挙法による選挙運動のために使用するポスター又は立札については、表示することができる。

②知事は、ガイドライン第6条に規定される許可地域等の指定をし、又は変更するときは、屋外広告物審議会の意見をきかなければならない。

③知事は、ガイドライン第9条に規定される景観保全型広告整備地区として指定し、又は変更するときは、その旨を公示する。

④ガイドライン第14条に規定される広告物を表示するときは、広告物の内容、位置、形状、面積、色彩、意匠等について定められる規格に適合しなければならない。

この問題は一見難しそうに見えるのですが、あることを知っているだけ極めて簡単な問題になってしまいます。正解は④です。ガイドラインでも、屋外広告物法でも、広告物の内容に立ち入ることはできないのです。表現の自由というやつです。これを知っているだけで、他の3問はスルーできます。ところが、ここに落とし穴があります。位置、形状、面積、色彩については制限をするのは妥当と思いますが、その後の意匠という言葉がありますね。意匠というのは、概ねデザインと言い換えて良いと考えます。つまり、デザインは制限できるのです。内容は制限できないけど、意匠は制限できると覚えましょう。

一応、他の3つも見ておきます。①は選挙に関する看板類掲示は比較的ゆるいと覚えましょう。禁止区域と禁止物件については今回解説しませんが、とてもよく出るのでガイドライン第11条の表丸覚え作戦をお勧めします。

②の屋外広告物審議会ですが、私自身八王子市の審議会委員に入っています。行政、大学教授、一級建築士、商工会議所、一般市民、そして屋外広告業者からなり、例えば直近ではショッピングモールや物流倉庫設立時の広告物のあり方について議論しました。説明に来た業者にはかなり厳しい指摘もあり、私自身はパイプ役のような役割となることが多いです。

③の景観保全型広告整備地区ですが、年々厳しさを増してきています。都内では、港区、世田谷区、千代田区など(他県では横浜市や小田原市)が先進的です。屋外広告物許可申請の他に、景観事前協議を求められるケースが増えていますが、屋外広告物許可申請の2倍の書類提出と考えて良いと思います。平成16年に景観法が公布され、屋外広告物法と異なる切り口での説明が必要になります。役所内でも、取り扱う部署が異なります。

ガイドライン第11条 適用除外となる広告物

ガイドライン第11条 適用除外となる広告物

次回は、その他の関係法規のうちの建築基準法の問題解説を行います。